金谷潤子
9月27日
長くなりますが、是非お読み下さい。
あるアットホームな高齢者施設です。
とても小ぶりの住宅で、入居されている方は忘れん坊さんが殆どです。
これは、私と施設のヘルパーさんたちのメールでのやり取りです。
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◆私
『◯◯さんのことですが、最後に処方変更してから三週間ほど経過しているかと思います。
時々、やんちゃはありますが、全体の雰囲気をここまで見ていて、施設ではいかがでしょうか?
許せる範囲ですか?
もう少しここをなんとか出来たらいいのにな、を教えていただけますか?
ご本人の為、スタッフさん達のために、宜しくお願い致します。』
◆施設長さん
『先生、いつもありがとうございます。
スタッフのみなさんに◯◯さんのこと聞いてみます。』
◆スタッフAさん
『◯◯様ですが、ベッド上で下衣を下ろされるようなことは見られなくなりました。
夜間の様子は日により変わります。
最初熟睡して日付が変わるくらいから浅眠になったり、
夜中の二時や三時くらいから覚醒して元気になったりといった様子なので、
ご本人を考えるともう少しバランス良く出来ればとも思います。
寝起きの混乱が酷く強いと感じる事が増えている気がします。
それに伴い、周囲の入居者さんが影響を受けている為、これについても改善可能であれば改善したいところです。
日中については寝てしまったり起きていたりとまちまちですが、以前は寝てばかりいたことを考えると改善されてきている、と判断出来るように思います。
許せるか、と言えばパンツを脱がれない限りは思うところはありますが許せます。
声掛けで頑張っている姿も見られるので。
文脈がおかしかったらすいません。』
◆スタッフBさん
『おつかれ様です。
夜間の様子は夜勤をしていないため、皆さんの引き継ぎでしかわかりませんが、日中を観察していて感じたことは、
・歩行‥比較的安定している
・食欲‥ムラはあるものの意欲が出て来ている。
・水分‥以前より著しく摂取できている。そのせいか、痰がらみで出ないで苦しんでいることが少なくなってきた。
・座位‥お尻の痛みの訴えはあるが、体幹は安定し、しっかり座位を取れる。
・訴え‥このところ少し聞き取りずらいことがしばしばある。
「ゔ〜。」などと発することはあるがこちらの話しを聞いて頑張ってくれることが多くなった。
・排泄‥ポーターに座るまでかなりの時間がかかるため、間に合わず失禁してしまう。
ポーターにできたときは水分量の増加に伴い、
排尿時、気持ちいいぐらい音をたてて大量に出るようになった。
・ヨダレ‥寝ているときは見られないが離床時は常に出ている。
わがままなところはあるが、話しを聞いて頑張ってくれることや、離床時間が増えている。
落ち着かず一人で部屋から出てくることが最近は見られない。
などのことから以前に比べとても良い方向に進んでると思う。
もう少しなんとかできたらなぁー。と思うところは、ヨダレがもう少し落ち着けばいいなぁと思う。
思い着いたことを、ダァーっと書いて見ました。
日中帯で皆さんより少しの時間しか観察できていないため、違う点があるかもしれません。』
◆スタッフCさん
『お疲れ様です。
夜間や寝起きの様子などは夜勤の方たちにお任せしてしまいますが‥
日中は、以前よりコールが少なく、落ち着いている日が多くあると感じます。
ただ、失禁は以前より多いかなと。
「おしっこもれたー」と言って、確認したらパットにたっぷり失禁している事があります。
ポータブルまで行くのが面倒くさいのでしょうか。
それとも熟睡してしまって、気がついたら出ていた‥?これは、薬は関係ないですかね。
しかし、ポータブルでの排尿の際は、最近水分を多く摂っているせいか、いつもとても沢山、出ています。
昼食は、途中で声出しはあるものの、毎回8割程度は食べているかなと思いますので、お薬のお陰で食欲は以前より、ずっと増えているように感じます。
あとは、レクに参加する姿を多く見れます。
眠気が強いと起きれないのですが、以前は、ほとんど参加していなかった◯◯さんをレクの時間にフロアで見れるのは嬉しいです。
甘えて「頼む〜」と言うこともありますが、声を掛けて見守っているとご自分で頑張ってくれます。
拙い文で申し訳ありませんが、こんな所でしょうかm(_ _)m
よろしくお願い致します。』
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この施設のスタッフさん達は入居者さんのことをこんなにも懸命に考えて下さっています。
ヘルパーさんの疲弊や悲しい事件など、施設にも色々な問題はありますが、
やはり現場の方々の志と
それを理解して大切にする管理者、経営者ではないかと思います。
私が往診に行っても、受付の方達は背中を向けて下を向いている。
施設スタッフさんがどこにいるのか姿も見えない。
電話をかけてご様子を聞いても、誰もよく分からない。
そんな施設も山ほどあります。
私から声かけしても、目の奥は
「うるせーおばさん!」と、語っている。
ても、そんな施設で働いている方々はきっと面白くない毎日でしょう。
定時になるのを心待ちにして、逃げる様に帰ることでしょう。
ここの住宅のスタッフさん達は、いつもニコニコ楽しそうに働いておられます。
挨拶も完璧。
入居者さんのケアが楽になることだけを考えるのでは無く、共に楽しく安心な生活をおくることを心から望んでおられます。
あおいけあさんや銀木犀さんなどが生き生きとした施設を展開されていても、
そんな所は全体から見ると特殊だからとても真似できないという意見もあります。
けれども、このように名も知れない小さな施設でも、有名所に負けないくらいたくさんの真心と笑顔が溢れていましたので、
その姿を多くの方に是非見ていただきたくなりご紹介致しました。
全ての文はスタッフさんの言葉のままです。
ご紹介の了解も快諾していただきました。
※写真はこの◯◯さんが手の甲に大きな怪我をして処置をした時のご様子です。
病院に行けば縫合する様な怪我でしたが、何とか被覆材だけで治癒できました。
添えられている手の一つ一つに優しさと思いやりが滲み出ている様に思えませんか?(全て施設スタッフさん達の手です)