訪問診療ブログ『おもいやり』
金谷 潤子
10月19日
『おもいやり』
忘れん坊さんの高齢女性の家でよく見かけるものがあります。
大切にお世話されているぬいぐるみ達
ある方はお布団をちゃんとかけて仲良く並べて寝かせてあげて。
ある方はご飯分けては口元拭いてくれてるから変色していて。
ある方は小さな生花を背中に乗せ、おめかしさせてくれて。
ある方は日差しが眩しくないようにタオルをかけてくれたり。
歳をとっても
忘れん坊さんになっても
ちゃんと忘れていない
優しさ
おもいやり
気遣い
身の回りの小さな可愛らしいものを
お世話している。
ぬいぐるみ達は家族なんですね。
人としてとても大切な
美しい心は
もしかしたら私よりあなたより
忘れていない
大事なことは皆
じいちゃんばあちゃんが教えてくれた。
じいちゃんばあちゃんが生きて
今のこの時代を作って来てくれた。
醜いことや
つまらないことを数えるよりも
美しいことや
すばらしいことを数えた方が
きっと色々なことが楽しく幸せに見えてくるのではないだろうか。
※この写真はこの数年でたまたま私が撮影していた全く違う高齢女性たちのお部屋です。(何枚かあったはずとiPhoneの中の1万枚から何とか探し出しました多分まだ何枚か有るのですが…)
とてもほっこりしてその都度思わず笑みがこぼれました。
皆さま、大分忘れん坊さんでした。
感じる心によっては、「認知症のおばあちゃん達のヤバい仕業」と寂しい表現になるのかもしれませんね。
それこそがとても不幸だと思うのですが。
訪問診療ブログ『食介診察🍽』
金谷 潤子
10月18日
『食介診察』
今日は往診のタイミングが少し早くて、まだご飯食べている最中でしたので、食事介助をさせていただきました。
目の不自由な方なので、スプーンに適量を盛り手に握らせてあげます。
お口に運ぶのはご自身で。
上手にこぼさずに召し上がっておられました。
ゆっくりと食事介助していると、手の持って行くスピードや口の開け方でお好きなものがどれなのか分かり、咀嚼の程度や嚥下に要する時間、座り具合や覚醒の塩梅、集中の仕方など、書ききれないほどとても多くの情報を得ることができました。
採血検査や聴診では得られない、とても大切な情報です。
患者さんの日常を知ることなく、その方の在宅医療サポートをすることは難しいとつくづく感じます。
訪問診療ブログ『ゆるし』
金谷 潤子
10月17日
『ゆるし』
とてもお若い癌末期。
お子様たちも幼く、少しでも多くの時間を家でとのことでご紹介がありました。
毎日、笑顔に囲まれて楽しく尊い時間は過ぎました。
(まるで用意されたようなミラクルもたくさんありました)
まだお家に帰り3週間にもなりませんが、
3日前からあまりお話できなくなってきたので、
居間に布団を敷き詰め、大家族皆さんで夜は眠りました。
「川の字」がたくさんです。
家族との時間を何よりも大切にされておりましたので、もしお迎えが来ても慌てて私を呼ばなくても良いこと(呼んで下さっても勿論大丈夫!)をお伝えしておりました。
朝早くにショートメールで旅立ちのご連絡が来ました。
伺いますと、聖母さまのように微笑んだ(本当に笑顔でした)彼女のお顔に保湿のワセリンを一生懸命に塗る小さな手がたくさん。
お迎えが来たのは0時過ぎでしたが、ご家族皆様でゆっくりお別れをされていたとのことです。
そっと診断させていただくと、一度泣きやんでいた小さなお顔たちが一斉にクシャクシャになり、大粒の涙が止めどなく流れました。
もう、分かっていることとは思いながら
「また向こうでお母さんに会えるから、一生懸命に生きようね。向こうの時間は経つのがゆっくりだから、きっと天国に着いてからお母さんがホッとしてお茶飲んでいる間に、また会える日になりますよ。
だから、それまで、お母さんにたくさん報告できるように一生懸命生きましょう。」
と、お伝えしました。
血圧が50を切り意識が無くなっても、
小さな手が触れるとわずかに握り返してきました。
どんなに心残りだっただろうと思います。
それでも、全てを受け入れているような、
この世の不条理もゆるしてくれたような、
微笑みを見ると、
ただ、ただ、
私もしっかりと生き尽くそう、
またお会いする日まで。