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2019.05.29

訪問診療ブログ『大声をあげ続ける理由』

金谷 潤子
5月18日

ある施設の方。
前医からは認知症重度でコミュニケーションはほぼ不可能との診断でした。
お会いした当初は一日中ホールで大声で意味の分からない言葉を発し続けていました。
ヘルパーさん達も他の入居者さんも、「またか。仕方ない。」という諦めた雰囲気。
うるささから「動物園みたい…」と、心無い通りすがりの声も。

よくよく観察していくと、どうもこの方が大声を出し始めるのは「ビックリした」ことがきっかけではないかと感じて来ました。
普通に「〇〇さん、こんにちは」とお声かけしても、ビクッとなって大声を出し始める。
血圧計を巻こうとしても騒ぎ始める。
横で少しの物音がしても大声をあげ始める。

この方の脳はとても敏感で繊細で、普通の方なら特に驚かない僅かな刺激でも、反応してしまうのではないか?

てんかん発作は痙攣や意識消失などの症状となって現れますが、この方は脳の一時的な異常反応が「大声をあげ続ける」という症状として現れるのではないか?

驚きやすく精神不安のある方に用いる柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)と、弱い抗てんかん薬を気分安定化のために処方しました。

住宅のヘルパーさん達には、
「〇〇さんが大声をあげ続けるのは、少しの刺激でビックリして声が反射的に出てしまい、自分でそれを止められないんです。
驚かないように工夫した声かけやケアをお願いできますか?」
と、ご説明しました。

往診の際にも、先ずは優しく肩に触れてから、お顔を見てゆっくり静かにお声かけしていくと、大声にならないことが増えてきました。
そして数ヶ月後、〇〇さんの声出しは殆ど無くなりました。
抗てんかん薬は中止し、柴胡加竜骨牡蛎湯だけになりました。

落ち着いてきた〇〇さんですが、相変わらずお口の中のケアはなかなかできません。
恐怖心なのか、口腔ケアの際に歯ブラシを力一杯噛み締めてしまい、下手するとヘルパーさんが指を怪我しそうになります。
そこで、ひだまり訪問歯科の二俣 慎先生に相談して、定期的に入っていただくことに。

二俣先生は大きな手で優しく顔や頚のマッサージをして、頭頸部の筋肉の緊張をほぐし、ご本人のリラックスも促してから丁寧に口腔ケアをして下さいます。
住宅のヘルパーさんにもコツを伝授。
そして1ヶ月後。

往診しますと、あまりにもご本人のお顔つきが違うことに仰天!!
スッキリしっかりとした笑顔。

「〇〇さん、いいオトコ!!すごくカッコよくなりましたね!!」と言うと、「ホッホッホ」と私の目を見てニヤリ。
目が生きてます!
焦点が合っていて瞳に心が映し出されてます。
ちゃんとコミュニケーションも取れます!
しかも更に落ち着いていて、漢方も減らしても良さそうです。
歯科の先生のテクニックとコツを指導を受けたヘルパーさん達から適切なケアが施され、
唾液の量や性状の変化と共に栄養吸収が改善され、
ご本人の自律神経系を整え、
脳の過敏性も正常に近づいて来た様子です。
歯科のチカラに改めて感謝感激

誤嚥性肺炎などもしばらく縁遠くなり安心できそう

二俣先生、ありがとう

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