ブログ

2024.09.20

弔ってきました

安倍晋三さんが暗殺された現場を訪れ、弔ってきました。
今から、ほんの2年前、2022年7月8日、安倍晋三元総理が奈良県奈良市の近畿日本鉄道大和西大寺駅前付近で暗殺されました。犯人の動機、手口など不明な点はまだありますが、事実として、この時をきっかけに日本を含め世の中の環境は大きく変わっていくような気がします。一番大きな変化は、現在、自民党総裁選が行われており、前代未聞の9人もの候補者が立候補していることから解るように、大きく世代交代の波がきているように感じます。政治は世の中の鏡と言われますが、世代交代、新時代の予感はさまざまな分野で起こっているようです。
 私は楽観主義なので、有史以来、日本は一度も悪い方向に進んだことはないと思っています。その根拠は、ずっと日本人の寿命は伸び続けているからです。生きている人間の幸福度、心根はその時代時代で違うでしょうから良し悪しは簡単に言えませんが、人間の命が簡単に奪われない世の中の実現。このことが成し遂げられているだけで、国家の役割は十分果たされていると思います。その点、今後の世の中にあまり不安は感じていないのですが、世界の情勢を眺めると不安定感が増しており、若干心配です。今後、私たちが心がけていかねばならないテーマは、心の成熟ではないでしょうか。体の仕組みについては、現代科学がますます明らかにしていくでしょう。しかし、幸福度、精神的な成熟については、医学は非力です。科学者は、心の仕組みまで科学で明らかにしようとしてさまざまな病名をつけ、薬物でコントロールしようとしてきました。しかし、その薬物療法が進んでいる日本はG7(先進国)で最も自殺者の多い国です。いかに、医学が進んでも解決できない問題はあります。幸い、日本は世界で最も長く考える時間を与えられた国です。その時間の有効活用として、肉体の変化、心の安寧についてじっくりと取り組むのはいかがでしょうか。そのためには、少なくとも体の調子を維持することは大切です。
 以前にも、何度か書きましたが健康は、自然に叶えられるものではありません。健康長寿には、①ビタミン、ミネラルなどの栄養バランス、②痛みなどの炎症のないこと、③血流がいいこと、が大切です。

 改めて、健康に感謝する日々です。
 安らかにお眠りください。合掌。

2024.06.27

医魂商才ノススメー新紙幣発行に思うことー

7月3日に、20年ぶりに新紙幣が発行されます。医師としては、北里柴三郎という偉人が採用されたことは喜ばしいことですが、「諭吉さん」の愛称で一万円札に描かれていた福澤諭吉は日本人の心の開国に貢献した偉人です。「天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ人ノ下ニ人ヲ造ラズ」という有名な一節で始まる『学問のすゝめ』は攘夷に染まっていた混乱期の日本人の心に真の近代化に向けて進むべき道標を示しました。
 現在の日本の医療制度は多くの問題を抱えてます。具体的には、患者は誰でも最高の医療を望むが、医療費を負担する立場からすればできるだけ保険料や税が低い水準である事を望みます。しかし、これは100円ショッブでブランド品を求めるようなもので、行政はこの事に対する解答を示してはくれません。全ての責任を負わされるのは医師、医療機関ですが、現場での処理能力は限界を超えており、これらのサービスにどの位の財源が必要なのか、どのように適切に配分していけば良いかは、答えられない状態です。しかし、今までの医学教育は「医は仁術」とし、経営能力は必要ないものとしてきました。これが、今日の医療崩壊の大きな原因の一つです。かつて経営破綻したJALの例を引くまでもなく、親方日の丸の体質があまりにも深く医学界に浸透してきました。医療関係のリーダー達でさえ、その多くは闇雲に医療費の増額を訴えるのみに終始してます。それほどに、医師は経営のスキルを持っていないのです。
 それでは、医療は他のサービス業と同じように完全に民間企業に委ねてよいものでしょうか?私は、反対です。それは、民間企業主導では、医療の公平性、平等性が保証されないからです。最低限平等な医療サービスは全国民に保証されなくてはなりません。民間企業が営利のみを追求すると、昨今の投資を巡る企業犯罪のようなモラルハザードを起こします。日本資本主義の父といわれる渋沢栄一は営利主義の弊害を予知し、『論語と算盤』を著し、「道徳経済合一説」という理念を打ち出しました。理想の経営者は片手に論語、片手にソロバンを持つといった高い倫理感が必要であるという理念は、現在にも通用するものです。しかし、医師の場合には、倫理と医療技術といった両立しなくてはならないものが既にあり、その上にさらに経済学,経営学まで理解しなくてはならなくなってきた事が両立を困難にしています。
 以上の事から、これからの医療には経済学、経営学が必要となってきますが、医師がこれを全て担う事は難しいです。したがって、SPC(特定目的会社)のような「医経分離」は理にかなっています。しかし、医師以外の経営陣主導による病院経営は医療現場との距離ができ、現場に対する理解不足、さらに、そこに従事する医師達の就労意欲が低下し、長期的には成功しません。最良の解決策は、医師が経営学、経済学の基礎を身につけ、医療現場、事務職両方を巻き込んで、経営のリーダーシップを取っていく事です。制度が違うので一概には比較できないが、米国ではMBAは病院経営に必須の資格になってきており、大学院でもMD/PhDコースと並んで、MD/MBAコースを有する大学が増えてきています。より良い医療を行うためには、経営的手腕が必要です。医は仁術ですが、算術(経営力)も同時に必要なのです。

2024.06.11

GOのはなし−深〜い囲碁の話−

囲碁(いご)とは、二人で行うボードゲームの一種です。ルールは単純で交互に盤上に石を置いていき、自分の石で囲んだ領域の広さを争うというものです。単に、碁ともよばれます。私と囲碁の出会いは、今は亡き父が趣味としていたため、子供の頃に始めたことによります。当時は、一局打つと10円もらえたので、小遣い欲しさでしたが、そのうち面白くなってきました。
 囲碁の歴史は古く、中国で紀元前に始まり、2千年前にはすでに庶民のゲームとして一般的でした。日本には吉備真備らの遣唐使以降伝わったといわれています。昔は女性もよくたしなみ、紫式部や清少納言も囲碁をやっていたようです。囲碁は、序盤の布石から中盤の戦い、終盤のヨセと戦略性に富み、実際の戦闘にも似たところが多く、岡目八目、定石、一目置く、駄目、八百長、布石、捨て石、死活問題、大局観、目算など、ことわざになっている言葉も多数あります。
 私は麻酔科医ですが、麻酔と囲碁の関わりも二つほどあります。一つは、三国志で有名な関羽の逸話で、腕の矢傷の治療を受けるのに囲碁を打ち気を紛らわして麻酔なしで手術をしたというものです。この時に治療を担当したのが伝説の名医といわれる華佗(かだ)です。華佗は『麻沸散(まふつさん)』といわれる世界で最初の全身麻酔薬を発明したことで有名です。しかし、華佗は曹操によって殺されてしまい、麻酔薬の秘密は永遠に謎になってしまいました。余談ですが、この『麻沸散』の再現に挑戦し『通仙散(つうせんさん)』という麻酔薬を発明したのが華岡青洲(はなおかせいしゅう)という日本の医師で、記録上は世界最初の全身麻酔として日本の誇るべき業績です。もう一つは、日本の名棋士の一人、趙治勲(ちょうちくん)で、彼が交通事故でケガをした時に、手術のために麻酔が必要だとしても、「碁が弱くなっちゃいけない。麻酔だけは打たないでくれ。」といって、麻酔なしで手術を受けたことです。ただ、現代の医療で、麻酔で碁が弱くなるとは考えられませんし、ご本人も全身麻酔で手術を受けたといっており、盛り上げるための作り話です。
 あと、最近話題になったのは、AI(人工知能)と囲碁の話です。AIとの勝負は、チェスに始まり、1997年にIBMの「ディープブルー」が世界チャンピオンを打ち負かします。しかし、将棋や囲碁はずっと複雑なので人間の方が優位でした。その後、AIはさらに進歩を続け2013年には将棋、2015年にはついに囲碁の欧州チャンピオンにも勝利します。2016年には、世界最強棋士にも勝ち越します。今後の我々人類の未来はAIに握られるようになるかもしれません。

1 2 3 4 5
一番上に戻る