ブログ

2019.10.23

訪問診療ブログ『食介診察🍽』

金谷 潤子
10月18日

『食介診察

今日は往診のタイミングが少し早くて、まだご飯食べている最中でしたので、食事介助をさせていただきました。
目の不自由な方なので、スプーンに適量を盛り手に握らせてあげます。
お口に運ぶのはご自身で。
上手にこぼさずに召し上がっておられました。
ゆっくりと食事介助していると、手の持って行くスピードや口の開け方でお好きなものがどれなのか分かり、咀嚼の程度や嚥下に要する時間、座り具合や覚醒の塩梅、集中の仕方など、書ききれないほどとても多くの情報を得ることができました。
採血検査や聴診では得られない、とても大切な情報です。
患者さんの日常を知ることなく、その方の在宅医療サポートをすることは難しいとつくづく感じます。

2019.10.23

訪問診療ブログ『ゆるし』

金谷 潤子
10月17日

『ゆるし』

とてもお若い癌末期。
お子様たちも幼く、少しでも多くの時間を家でとのことでご紹介がありました。
毎日、笑顔に囲まれて楽しく尊い時間は過ぎました。
(まるで用意されたようなミラクルもたくさんありました)

まだお家に帰り3週間にもなりませんが、
3日前からあまりお話できなくなってきたので、
居間に布団を敷き詰め、大家族皆さんで夜は眠りました。
「川の字」がたくさんです。

家族との時間を何よりも大切にされておりましたので、もしお迎えが来ても慌てて私を呼ばなくても良いこと(呼んで下さっても勿論大丈夫!)をお伝えしておりました。

朝早くにショートメールで旅立ちのご連絡が来ました。
伺いますと、聖母さまのように微笑んだ(本当に笑顔でした)彼女のお顔に保湿のワセリンを一生懸命に塗る小さな手がたくさん。
お迎えが来たのは0時過ぎでしたが、ご家族皆様でゆっくりお別れをされていたとのことです。

そっと診断させていただくと、一度泣きやんでいた小さなお顔たちが一斉にクシャクシャになり、大粒の涙が止めどなく流れました。

もう、分かっていることとは思いながら
「また向こうでお母さんに会えるから、一生懸命に生きようね。向こうの時間は経つのがゆっくりだから、きっと天国に着いてからお母さんがホッとしてお茶飲んでいる間に、また会える日になりますよ。
だから、それまで、お母さんにたくさん報告できるように一生懸命生きましょう。」
と、お伝えしました。

血圧が50を切り意識が無くなっても、
小さな手が触れるとわずかに握り返してきました。
どんなに心残りだっただろうと思います。

それでも、全てを受け入れているような、
この世の不条理もゆるしてくれたような、
微笑みを見ると、

ただ、ただ、

私もしっかりと生き尽くそう、
またお会いする日まで。

2019.10.23

訪問診療ブログ『魂のことば』

金谷 潤子
10月13日

『魂のことば』

私は患者さんのご家族やご本人とメールやショートメールやLINEなどでやり取りをすることがあります。
わざわざ電話をするのは気が引ける。
けれども、不安なことがある。
そのような状況は思いのほか多いと感じています。
終末期の方の場合は、何かしらで繋がっていることが多いです。

とてもお若い、まだまだ人生の3分の1くらいの癌末期の方。

この方とのLINEでどれほど私が泣いたか分かりません。
なぜ泣いているのか、
分からないほど号泣しました。
眼が腫れ上がるほど。

私は患者さんのことでは大抵泣かないのですが。

ご紹介されてから、3回しかお会いしていません。
初診から2週間も経ちません。

なのに、
この方の短い言葉は
私の心の奥深くまで
するりと届き
大切な何かを教えてくれます。

特別なことではありません。
ご体調の報告、
気分、
短いひと言。

それだけ。
今までに数回だけ。

それなのに、なぜ。

ご家族のサポートはしっかり強く、
残された時間を少しでも共有したいという思いが伝わってきましたので、
麻薬もごくわずかの経口とし、
ご家族で調整していただくことにしました。

麻薬を使い始める時には、いつも微調整が可能であることを念頭に置きます。
私の患者さんたちは最期までお話したり、
食べたり、感じたり、
していたいと願う方が多いため、特に。

この方のいのちの伴走を、
遅れて後ろからそっと見守りさせていただいていて、
すごいなと、
感服するばかりです。

いのちの種火を目の前に、
人の気持ちや身体をなんとかコントロールしようなんて、そんな奢った考え方が通用する訳が無い。

医者は「病気」を治す為のことしか習いません。
終末期の方は、病気ではない。
緩和ケアは「治す」ものではない。
医療者が提供できることは、
ごく一部でしかない。
いのちに心からの敬意を表しながら、
整うための工夫について真剣に考え尽くす。

本当に学びの思いしかありません。


咲きこぼれている蕾は、往診時の庭先からです。

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