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2019.10.11

訪問診療ブログ『高齢者施設の小さな星⭐️』

金谷潤子
9月27日

長くなりますが、是非お読み下さい。

あるアットホームな高齢者施設です。
とても小ぶりの住宅で、入居されている方は忘れん坊さんが殆どです。

これは、私と施設のヘルパーさんたちのメールでのやり取りです。
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◆私
『◯◯さんのことですが、最後に処方変更してから三週間ほど経過しているかと思います。
時々、やんちゃはありますが、全体の雰囲気をここまで見ていて、施設ではいかがでしょうか?
許せる範囲ですか?
もう少しここをなんとか出来たらいいのにな、を教えていただけますか?
ご本人の為、スタッフさん達のために、宜しくお願い致します。』

◆施設長さん
『先生、いつもありがとうございます。
スタッフのみなさんに◯◯さんのこと聞いてみます。』

◆スタッフAさん
『◯◯様ですが、ベッド上で下衣を下ろされるようなことは見られなくなりました。
夜間の様子は日により変わります。
最初熟睡して日付が変わるくらいから浅眠になったり、
夜中の二時や三時くらいから覚醒して元気になったりといった様子なので、
ご本人を考えるともう少しバランス良く出来ればとも思います。
寝起きの混乱が酷く強いと感じる事が増えている気がします。
それに伴い、周囲の入居者さんが影響を受けている為、これについても改善可能であれば改善したいところです。
日中については寝てしまったり起きていたりとまちまちですが、以前は寝てばかりいたことを考えると改善されてきている、と判断出来るように思います。

許せるか、と言えばパンツを脱がれない限りは思うところはありますが許せます。
声掛けで頑張っている姿も見られるので。
文脈がおかしかったらすいません。』

◆スタッフBさん
『おつかれ様です。
夜間の様子は夜勤をしていないため、皆さんの引き継ぎでしかわかりませんが、日中を観察していて感じたことは、
・歩行‥比較的安定している
・食欲‥ムラはあるものの意欲が出て来ている。
・水分‥以前より著しく摂取できている。そのせいか、痰がらみで出ないで苦しんでいることが少なくなってきた。
・座位‥お尻の痛みの訴えはあるが、体幹は安定し、しっかり座位を取れる。
・訴え‥このところ少し聞き取りずらいことがしばしばある。
「ゔ〜。」などと発することはあるがこちらの話しを聞いて頑張ってくれることが多くなった。
・排泄‥ポーターに座るまでかなりの時間がかかるため、間に合わず失禁してしまう。
ポーターにできたときは水分量の増加に伴い、
排尿時、気持ちいいぐらい音をたてて大量に出るようになった。
・ヨダレ‥寝ているときは見られないが離床時は常に出ている。

わがままなところはあるが、話しを聞いて頑張ってくれることや、離床時間が増えている。
落ち着かず一人で部屋から出てくることが最近は見られない。
などのことから以前に比べとても良い方向に進んでると思う。

もう少しなんとかできたらなぁー。と思うところは、ヨダレがもう少し落ち着けばいいなぁと思う。

思い着いたことを、ダァーっと書いて見ました。
日中帯で皆さんより少しの時間しか観察できていないため、違う点があるかもしれません。』

◆スタッフCさん
『お疲れ様です。
夜間や寝起きの様子などは夜勤の方たちにお任せしてしまいますが‥
日中は、以前よりコールが少なく、落ち着いている日が多くあると感じます。

ただ、失禁は以前より多いかなと。
「おしっこもれたー」と言って、確認したらパットにたっぷり失禁している事があります。
ポータブルまで行くのが面倒くさいのでしょうか。
それとも熟睡してしまって、気がついたら出ていた‥?これは、薬は関係ないですかね。
しかし、ポータブルでの排尿の際は、最近水分を多く摂っているせいか、いつもとても沢山、出ています。

昼食は、途中で声出しはあるものの、毎回8割程度は食べているかなと思いますので、お薬のお陰で食欲は以前より、ずっと増えているように感じます。

あとは、レクに参加する姿を多く見れます。
眠気が強いと起きれないのですが、以前は、ほとんど参加していなかった◯◯さんをレクの時間にフロアで見れるのは嬉しいです。
甘えて「頼む〜」と言うこともありますが、声を掛けて見守っているとご自分で頑張ってくれます。

拙い文で申し訳ありませんが、こんな所でしょうかm(_ _)m
よろしくお願い致します。』
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この施設のスタッフさん達は入居者さんのことをこんなにも懸命に考えて下さっています。
ヘルパーさんの疲弊や悲しい事件など、施設にも色々な問題はありますが、
やはり現場の方々の志と
それを理解して大切にする管理者、経営者ではないかと思います。

私が往診に行っても、受付の方達は背中を向けて下を向いている。
施設スタッフさんがどこにいるのか姿も見えない。
電話をかけてご様子を聞いても、誰もよく分からない。
そんな施設も山ほどあります。

私から声かけしても、目の奥は
「うるせーおばさん!」と、語っている。

ても、そんな施設で働いている方々はきっと面白くない毎日でしょう。
定時になるのを心待ちにして、逃げる様に帰ることでしょう。

ここの住宅のスタッフさん達は、いつもニコニコ楽しそうに働いておられます。
挨拶も完璧。
入居者さんのケアが楽になることだけを考えるのでは無く、共に楽しく安心な生活をおくることを心から望んでおられます。

あおいけあさんや銀木犀さんなどが生き生きとした施設を展開されていても、
そんな所は全体から見ると特殊だからとても真似できないという意見もあります。

けれども、このように名も知れない小さな施設でも、有名所に負けないくらいたくさんの真心と笑顔が溢れていましたので、
その姿を多くの方に是非見ていただきたくなりご紹介致しました。
全ての文はスタッフさんの言葉のままです。
ご紹介の了解も快諾していただきました。

※写真はこの◯◯さんが手の甲に大きな怪我をして処置をした時のご様子です。
病院に行けば縫合する様な怪我でしたが、何とか被覆材だけで治癒できました。
添えられている手の一つ一つに優しさと思いやりが滲み出ている様に思えませんか?(全て施設スタッフさん達の手です

2019.10.11

訪問診療ブログ『身支度を整えること』

金谷潤子
9月26日

まだお若い癌末期の女性。
家で最期をと、先週末に病院から退院されてご縁がありました。
聞けばご調子が悪くなる前には、週に一度はスーパー銭湯に行くのが大好きだったとのこと。

それはお風呂に入りたいでしょう。

ご家族様も是非、訪問入浴を叶えたいとご希望があり、ケアマネさんがお手配して下さっていました。
既に3日ほど前から血圧は下がり始め、お話もできない状態でしたが、

「お風呂に入っている間にお迎えが来たのならば、それはどんなに心地良い瞬間かと思います。
ご本人さまの入浴のご希望は是非叶えて差し上げましょう。」
と、ご家族さまにお話しました。
そして入浴が叶いました。

ご本人さまは温かい湯船の中で本当に気持ち良さそうな穏やかな表情でした。

さて、伸びた髪も切りたいと予約していた訪問理美容さんには、どうやら旅立ちの時間が間に合いそうにありません。

数人のケアマネさんに連絡して、心当たりの訪問理美容さんの連絡先をお聞きし、

「今、お迎えが来る方の髪を、
今、切っていただけませんか?
どうかお願いできませんか?」
と、昨日の夜中に無茶振り。

訪問理美容「あい愛」さんが二つ返事で向かって下さいました。
もう血圧は50を切っていましたが、
丁寧なお声かけの中で、
素敵に髪を切り、
お顔剃りと眉も整えて下さりました。

見違えるように若々しく変身です。

これからまるで街にお出かけするかのように、
美しく身支度が整い、
その数時間後に静かにお迎えが来ました。

この世で生きたその生き様の最期を、
理美容さんは
大切に仕上げて下さいました。

整えるとはとても気持ちの良いことですね。

無駄なものを払い、
美しいバランスで仕上げる。

身も心も整えることは、
禊(みそぎ)
清め
祓い(はらい)
に通じます。

お顔やお身体や御髪だけではなく、
魂もピカピカに磨かれて旅立たれたのだと思います。
お力添えを頂きました方々に心からお礼を申し上げます。

合掌。

2019.10.11

訪問診療ブログ『胃瘻の方のその後…夫婦の大切な時間…そしてお別れ』

金谷潤子
9月19日

2月に胃瘻選択した方の投稿をし、
5月にさらに続編の投稿をしました。

実は昨年の今頃、この方が自宅退院された後、1ヶ月後にまさかのお父さまに末期癌が見つかっていました。

それでもお父さまは自分のことより、お母さまのお世話をすることを毎日大切にして過ごして来ました。
アクシデントを乗り越えて作り上げてきたご夫婦のささやかな幸せな時間も、残念ながらしばしの中断となります。

お父さまが静かに先立たれました。

もう一度、5月の投稿をご紹介させて下さい。
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「脳卒中の高齢女性。
リハビリ入院されていましたが、どうも状態が悪くひっきりなしに痰の吸引の毎日。
病院はこれ以上できることは無いとのこと。
娘さまとお父さまはそれならばと、自宅看取りも念頭に置かれてご縁があり昨年9月に退院しました。

お母さまは鼻管から栄養が入り、点滴をして、酸素が必要でした。
応答は全くありません。身動きもしません。
グァッグァッという、イビキとは違う苦しそうな呼吸音が一日中喉からしていました。
微熱があり、痰の吸引は頻回。

栄養と点滴をやめて自然なお看取りについて話し合いました。
けれども、ご主人さまは諦めきれない。
これ程病状が進む前、介護が少し必要となった奥様のために建て増ししたバリアフリーのお部屋。
やっと家に連れて帰って来たのにお別れなんて辛すぎる。

分かります。

お話を色々聞くと、以前鼻管が入っていた際には自分で何度も抜いてしまっていたとのこと。
鼻管がかなりのストレスとなる方は多くいらっしゃいます。
この喉元の苦しそうな音や、とめどなく上がってくる痰や、低酸素状態や発熱は何もかもが鼻管のせいに思われてなりません。

私は昔、鼻管がどれほどの苦痛か理解する為に自分で入れてみたことがあります。

鼻の奥から喉に管が常にあるその違和感は半端なく。

吐き気を催し、本当に辛かった。
人によっては咽頭の感覚が鋭敏な方と鈍磨な方がいらっしゃいますから一概には言えませんが、鼻管が入っていることで私は唾もうまく飲めませんでした。
患者さんによっては鼻管が入っていることそのものが誤嚥を引き起こす原因になる場合もあるのです。

私は鼻管の代わりに胃瘻を作る事についてご家族に提案をしました。

お父さまは「また入院はもう嫌だ。」
「苦しませるのも嫌だ。」

そうですよね。
でも、胃瘻の手術侵襲は胃カメラとさほど変わりません。
卒業したい時に胃瘻のカテーテルを抜くのはその場でもでき、孔は絆創膏で留めておくだけであっという間に自然に塞がります。

鼻管が取れたなら、お母さまはもっと良い方向に行くように私は思うのです。
お看取りを考えなくても良いかもしれません。
お別れしたくないが為にお父さまも胃瘻に同意され、
理解のある消化器の先生にご相談して短期入院を受けていただきました。
退院してから約1ヶ月後でした。

そして胃瘻栄養となり痰の吸引は殆ど必要無くなりました。
酸素吸入も必要無くなりました。

喉元の苦しそうな音は消失し、呼吸は安らかで、日中は開眼し表情が豊かになりました。
手足も少し動かすようになりました。
お声かけに反応することも増えています。
リハビリも始めました。
少しの楽しみならば口から食べる可能性も有るかもと判断して、嚥下のリハビリの為に訪問歯科さんも一生懸命工夫して下さってます。

お父さまは介護と寄り添いに生きる喜びを感じて日々過ごしておられます。

先日、往診の際に麻痺ではない右手を取り、

「〇〇さん、お父さんと毎日一緒に居て嬉しい?
嬉しかったら手をぎゅっとしてね。」
と、声かけすると直ぐにびっくりするくらい力強くぎゅっと握り返してきたのです。

じわぁっと目頭が熱くなりました。

この方はちゃんと毎日生きておられる。
感じておられる。

「お父さん!お父さん!
お母さんね、今、強くぎゅっとしたよ!
お父さんと一緒に居て幸せだって!!」

お父さまも目が潤み恥ずかしそうに「そうかい。嬉しいね。」

それからは娘さまも毎日、
ハンドコミュニケーションを楽しんでおられます。
リハビリの先生にお伝えして、コミュニケーションの手段など色々工夫していただけないか早速お願い致しました。
歯科からのさらなる応援もいただけるとの事です。

この方を自然経過でお看取りせずに、胃瘻を造設したことは延命治療でしょうか?

どの人にも生きるエネルギーの灯火があります。
どれほど高齢でも
意識レベルが低下していても
いのちの灯火は緩やかに小さくなろうと、消える仕度をしているのか、
あるいは小さな種火でも大きく燃えさかるチャンスを待っているのか、
私は医療者としてしっかりと見逃さないようにしたいといつも思います。」
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※写真は5月の投稿時と、7月に訪問看護さんと訪問リハビリさんで外に連れ出して下さった時のご夫婦の姿です。
またいつかこんな風に幸せにご一緒されて下さい。
先にゆっくり休まれて、待っていて下さいね。

合掌。

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