ファスティング(Fasting)とは、特定の期間食事を制限または絶食することを指します。一般的には、水や飲み物の摂取は許可される場合がありますが、栄養素を含む食物の摂取を制限することが特徴です。
ファスティングは、その効能の一つであるオートファジーで大隅良典先生がノーベル賞を受賞したことから一般にも広く知られましたが、健康法として古くから行われてきた断食療法とほとんど同じものです。断食が体に良い効果があることは、現在でもキリスト教、仏教、イスラム教などいくつもの宗教で行われていること、古くはギリシャ時代から自然治癒力を高めるものとして行われてきました。ただ、メカニズムが不明だったのが最近の研究で徐々に明らかになってきただけです。
ファスティングのメカニズムには以下のことが考えられています。
1)インスリンと血糖調節: 食事を摂取しないことで血糖値が下がり、その結果インスリンの分泌が抑制されます。これにより、脂肪組織からの脂肪分解(脂肪酸とグリセリンの放出)が促進され、エネルギー供給源として利用されます。
2)オートファジーの促進: ファスティング中、細胞はオートファジーにより老廃物や損傷した細胞部位を分解し、再利用または排出します。これにより、細胞の健康維持や修復が促進されます。
3)ミトコンドリアの機能改善: ファスティングはミトコンドリアの機能を改善し、エネルギー生産の効率性を高めることが示唆されています。これにより、細胞のエネルギー効率が向上し、細胞の健康維持が促進されます。
4)炎症反応の減少: ファスティングは炎症マーカーの低下に寄与することが報告されており、炎症性疾患のリスク低減につながる可能性があります。
数年前のアメリカのアンチエイジング学会では、体を内側から若返らせる方法として、このファスティングが注目されていました。ただ、完全断食のファスティングは危険を避けるため医療者等の観察・指導が必要です。そのため、インターバルファスティング、プチ断食といわれるような一般人が安全に取り組める方法がいくつか開発されてきています。アメリカではすでにファスティングも健康ビジネスになっていて、FMD(fasting mimic diet)といった食品サービスも手軽なファスティング法として始まっています。